家庭菜園やガーデニングで植物に触れる機会が多くなっている方が増えていると思います。
野菜や植物を育てる上でどうしても避けては通れないのが、害虫被害です。
「緑色の茎に何か付いているな~」と思ってよく見ると、大量の虫が付いていてビックリするなんて経験はあるのではないでしょうか。
野菜や植物を育てる上での天敵害虫としてもっとも名高い虫「アブラムシ」について今回は調べてみました。
アブラムシとは
アブラムシは、全世界で4,700種類、日本国内でも700種類いると言われており、全世界で被害を出しているとても厄介な虫です。
作物に深刻な被害をもたらす病気の上位3つは、そのウイルスをアブラムシが媒介して被害を拡大していると言われています。
アブラムシは春と秋に活発に行動し、体長は2~3mmの小さな虫で、一匹の寿命は30日~40日ですが、繁殖力がとても強いため、長い期間にわたり被害をもたらします。
メスは単為生殖で産卵できる虫。
2回目以降の出産ではすでに子供を宿した状態で生まれてくるという珍しい生態をもっています。
そのため、短期間で爆発的に数を増やします。
1匹のメスが寿命を終えるまでにその数は1万倍近くにまで増加すると言われています。
また、基本的にアブラムシは一つの野菜や植物に被害を与え続けながら爆発的な繁殖力で数を増やします。
その後から生まれてくる個体の居場所がなくなると、次に羽を持った個体を産むようになります。
環境に合わせて産む個体の形を変えてしまうというのも、非常に珍しい生態だそうです。
羽を持ったアブラムシは、他の野菜や植物に飛んで移動し、どんどんと食害の被害を広げていきます。
前に食害していた野菜や植物が病気にかかっていた場合、その病気のウイルスも一緒に運び、新しく食害する野菜や作物に対してウイルスを媒介します。
その後羽を持ったアブラムシが新しく産まれ、他の野菜や植物へ病気の被害を拡大させます。
アブラムシ自体はとても弱い虫で、体に栄養を蓄えており、テントウムシなどの肉食系昆虫が好んで食べます。
それに対し、アブラムシは甘露と呼ばれる甘い排泄物を出し、アリを呼び込み、自身の近くに寄り付かせることで天敵から身を守っています。
この甘露が大量に発生してしまうと、「すす病」という病気の発生原因となります。
アブラムシの発生原因
アブラムシはアミノ酸が大好きなため、「窒素分の多い肥料」を与えすぎることで、葉で合成されるアミノ酸が多くなってしまい、アブラムシが発生しやすくなります。
また、日当たりが弱く、風通しの悪い場所で多く発生する虫です。風通しをよくし、野菜や植物に光がまんべんなく当たるようにしましょう。
アブラムシの駆除
アブラムシが運ぶウイルスで有名なのが「モザイクウイルス」です。
モザイクウイルスは「モザイク病」を引き起こし、感染した作物は枯れたり果実に奇形を生じさせたりします。
モザイク病は有効な農薬が無く、一度感染してしまうと治療することが出来ないというとても怖い病気です。
そのため、その媒介役であるアブラムシの駆除は大変重要となります。
一番確実な駆除方法としては、農薬の散布が挙げられますが、同じ農薬を使い続けるとその農薬に対しての抵抗性を持ってしまう恐れがありますので、何種類かをローテーションにて使用した方が良いかもしれません。
家庭菜園やガーデニングでは無農薬にこだわる方も少なくないと思いますので、その場合は農薬を使用しないでアブラムシを駆除する方法があります。
1.直接駆除
手やブラシなどを使用して、野菜や植物から落として駆除。
また、粘着テープを使用して捕まえる方法もあります。
2.無農薬の駆除液を作って直接吹きかける
- 牛乳(水と1:1で割ったもの、もしくは原液)
- 石鹸水(水500mlに対して2~3滴程度の油と洗剤)
3.自然派農薬を使用する
食品や自然界に存在している物質や菌を使用した農薬があります。
もちろん人体への安全性は確認されているので、そちらを使用します。
4.水の力で吹き飛ばす
ポンプ式の噴霧器やホースなどを使用し、野菜や植物に強い勢いで水を当てて、その勢いでアブラムシを吹き飛ばします。
しかし、勢いが強すぎると野菜や植物を痛めてしまう恐れがあります。
水のやり過ぎも悪影響となる場合がありますのでご注意ください。
5.生物農薬を使用する
農薬としての目的で利用される生きた生物(生物農薬)を使用します。
アブラムシに対しては、一番の天敵であるテントウムシが入った「テントップ」などが有名です。
アブラムシ対策
全ての害虫被害に言えることですが、害虫が出てから対応するのではなく、害虫が出る前に対策を行うことが大切です。
そのため、アブラムシが寄り付かないように、野菜や植物が育つ前から対策を行いましょう。
アブラムシへの対策としては、羽を持った個体への対策となります。
最初に考えられる対策としては、ネットでの防虫が効果的であるといえます。
しかし、ネットにちょっとした隙間が空いているとそこから入り込んでしまう恐れがあるので、しっかりと設置しましょう。
次に、アブラムシは黄色に寄り付く性質があるため、その性質を利用して、野菜や植物の近くに黄色のバケツを置き、中に水と油、お酢を入れ放置しておけばアブラムシが溺れます。
また、アブラムシは光を嫌がるため、野菜や植物の周りにアルミ箔やCDなどを置き、光を反射させることで寄り付くことを防げます。
ホームセンターで売っている木酢液(木炭を作る際に出る水)を野菜や植物、またはその土にかけるとアブラムシは寄り付かず、植物の生育にも良いとされているため、一石二鳥です。
まとめ
- アブラムシは世界中で被害を出している害虫である。
- 羽のあるアブラムシが色々な野菜や植物に寄生することで、病気のウイルスを媒介し、被害が拡大してしまう。特に「モザイク病」は大変厄介なので、要注意。
- アブラムシ用の農薬を使用するのが確実だが、無農薬で駆除する場合、直接駆除するか、自家製の駆除液を作ったり、水やりや生物農薬を使用するなどの方法がある。
- 被害が出る前に対策をするのが有効で、野菜や植物にネットをかけたり、色で寄せ付けたり、反射物を使用して寄せ付けない、木酢液を使用するなどの事前対策がある。